広島地方裁判所 昭和48年(わ)153号 判決 1974年4月01日
本店所在地
広島市安佐町大字後山一、三六七番地の四
株式会社小西養鯉場
右代表者代表取締役
小西利勝
本籍
広島市安佐町大字後山一、三六七番地の四
住居
広島市三篠町三丁目四番二号
会社役員
小西利勝
昭和二年三月七日生
右株式会社小西養鯉場に対する法人税法違反、小西利勝に対する法人税法違反、所得税法違反各被告事件について、当裁判所は検察官久富進出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告会社株式会社小西養鯉場を罰金三〇〇万円に、被告人小西利勝を懲役一〇月および罰金一、〇〇〇万円に各処する。
被告人小西利勝が右罰金を完納することができないときは金二万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
被告人小西利勝に対しこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社株式会社小西養鯉場は、昭和四六年七月二一日から広島市安佐町大字後山一、三六七番地の四に本店を置き、養鯉業等の事業を営むもの、被告人小西利勝は昭和二六年ころから右同所に事務所を設け、小西養鯉場の名称で養鯉業を営み、昭和四六年七月二一日前記株式会社の設立以降は同会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、
第一、被告人小西利勝は所定の所得税を不正に免れようと企て、売上の一部を帳簿から除外し、簿外の株式、債券および土地を取得し、さらに偽名の預金口座を設定するなどの方法により所得を秘匿し、
一、昭和四四年一月一日から同年一二月三一日までの期間における実際所得金額が別紙修正貸借対照表その(一)および別紙税額計算書記載のとおり、少くとも五一、七二四、一〇九円で、これに対する所得税額が二九、四七五、〇〇〇円であるのにかかわらず、昭和四五年三月一六日同市可部町大字中野五〇二番地の一所在の所轄可部税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三、九一七、七〇七円でこれに対する所得税額が八九九、二〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額二九、四七五、〇〇〇円と右申告税額との差額二八、五七五、八〇〇円をほ脱し
二、昭和四五年一月一日から同年一二月三一日までの期間における実際所得金額が別紙修正貸借対照表その(二)および別紙税額計算書記載のとおり、少くとも一七、七四一、四〇四円でこれに対する所得税額が七、五六六、六〇〇円であるのにかかわらず、昭和四六年三月一五日前記可部税務署において、同税務署長に対し、所得金額が、五、〇二八、三二五円で、これに対する所得税額が一、一三九、二〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額七、五六六、六〇〇円と右申告税額との差額六、四二七、四〇〇円をほ脱し
三、昭和四六年一月一日から同年一二月三一日までの期間における実際所得金額が別紙修正貸借対照表その(三)および別紙税額計算書記載のとおり、少くとも二六、六三五、九六〇円で、これに対する所得税額が一二、二五三、〇〇〇円であるのにかかわらず、昭和四七年三月一五日前記可部税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三、六九九、五六六円でこれに対する所得税額が四六五、六〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額一二、二五三、〇〇〇円と右申告税額との差額一一、七八七、四〇〇円をほ脱し
第二、被告人小西利勝は被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、昭和四六年七月二一日から昭和四七年二月二九日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が別紙修正貸借対照表その(四)記載のとおり、少くとも五八、四四五、一七五円で、これに対する法人税額が二一、三〇三、五〇〇円であるのにかかわらず、同会社の売上の一部を帳簿から除外し、架空の仕入れを帳簿に計上し、さらに簿外の株式および債券を取得する等の行為により所得を秘匿し、昭和四七年五月一日前記可部税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一、四二五、三〇〇円で、これに対する法人税額が三九九、〇〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右事業年度の正規の法人税額二一、三〇三、五〇〇円と右申告税額との差額二〇、九〇四、五〇〇円をほ脱したものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一、第一回公判調書中の被告人の供述部分
一、被告人の検察官に対する各供述調書
一、小西敏江の検察官に対する供述調書
判示冒頭の事実につき
一、登記簿謄本一通
別紙修正貸借対照表の各勘定科目につき(括弧内の算用数字は当該年度を示す。)
現金(44、47)
一、被告人および小西敏江作成の上申書
定期預金、同利息(各年度につき)
一、被告人作成の昭和四八年一月三〇日付上申書
一、小西敏江の大蔵事務官に対する上申書
一、三和銀行広島支店長袴田郁夫(二通)、協和銀行広島支店長宮坂和男、東京銀行広島支店長林勝夫、広島相互銀行三篠支店長地幸恒彦、富士銀行広島支店長竹田忠夫、商工組合中央金庫広島支店長江崎健(三通)
作成の各証明書
一、広島相互銀行三篠支店田村健二、広島相互銀行牛田支店松原隆、富士銀行広島支店長竹田忠夫作成の各上申書
一、大蔵事務官遠藤登芽夫、同田中悟作成の各調査事績報告書
一、大蔵事務官柴田元隆作成の現金有価証券等現在高検査てん末書
一、押収してある黒色表紙手帳一冊(昭和四八年押第一一五号の一三)
その他の預金、同利息(各年度につき)、社長勘定(47)
一、被告人作成の昭和四八年一月三〇日付上申書
一、小西敏江の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、協和銀行広島支店長宮坂和男、東京銀行広島支店長林勝夫、広島相互銀行三篠支店長地幸恒彦、広島相互銀行本店高松秀登、同楢原信興、広島相互銀行呉支店長山田安平、商工組合中央金庫広島支店長江崎健(三通)作成の各証明書
一、広島相互銀行三篠支店田村健二、大分銀行臼杵支店神野実作成の各上申請
一、大蔵事務官遠藤登芽夫、同三見正信作成の各調査事績報告書
一、押収してある黒表紙手帳一冊(前出)
受取手形(44、45)
一、大蔵事務官遠藤登芽夫、同沢井芳彦作成の各調査事績報告書
一、押収してある約束手形振出控綴一冊(昭和四八年押第一一五号の一〇)、約束手形入封筒七通(同号の一一の一ないし七)
売掛金(各年度)
一、被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、被告人および小西敏江作成の上申書
一、小西敏江、石原佐太郎の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、大蔵事務官遠藤登芽夫、同村岡卓夫作成の各調査事績報告書
一、押収してあるメモ四枚(昭和四八年押第一一五号の一五)、売上帳五冊(同号の一七ないし二一)
有価証券、社長勘定(各年度)
一、被告人作成の上申書二通
一、中村唯雄(44)、川西忠、福永義弘、大家公明(45、46)の検察官に対する各供述調書
一、福永義弘の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、三井信託銀行広島支店長升本逸夫(二通)、東京銀行広島支店長林勝夫、商工組合中央金庫広島支店長江崎健(三通)、野村証券広島支店長延与優児(45、46、47)、ウツミヤ証券細川信行(46、47)江口日東証券広島支店長三浦兼知(47)、山一証券広島支店長中村敬(44)、新日本証券広島支店長小熊誠(三通)作成の各証明書
一、ウツミヤ証券細川信行(46)、東京銀行広島支店川村幸雄(46、47)、東京銀行広島支店伊東京子(46)、東京銀行名古屋支店山下真三雄(45、46)、新日本証券広島支店遠山潔、新日本証券広島支店岩城邦彦(45、46)、三井信託銀行広島支店長前羽宏作成の各上申書
一、商工組合中央金庫広島支店長江崎健作成の割引債一覧表
一、野村証券広島支店大賀光也作成の伝票写
一、大蔵事務官遠藤登芽夫、同柴田元隆、同山本嘉啓作成の各調査事績報告書
一、大蔵事務官遠藤登芽夫、同柴田元隆、同中胡大作成の各現金有価証券等現在高検査てん末書
棚卸資産、商品
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年一月九日付質問てん末書(44、46、47)
一、押収してある赤表紙売掛帳一冊(昭和四八年押第一一五号の一七-46)、封筒入書翰一袋(同号の一六)
貸付金、社長勘定(各年度)
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年一月一二日付質問てん末書
一、中村唯雄の検察官に対する供述調書
一、岩畔八郎の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、大蔵事務官遠藤登芽夫作成の調査事績報告書
一、押収してある不動産売買契約証書二通(昭和四八年押第一一五号の二四の一、二)、資産負債勘定一綴(同号の八)
土地(45、46)
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年一月一二日付質問てん末書
一、金子トミ子の検察官に対する供述調書および大蔵事務官に対する質問てん末書
一、岡竹賢二郎作成の上申書
一、押収してある登記済権利証一通(昭和四八年押第一一五号の二二)、土地売買契約書一通(同号の二三)、不動産売買契約証書二通(前出)、黒表紙手帳一冊(前出)
事業主貸(46)
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年一月九日付質問てん末書
一、押収してある納品書等一綴(昭和四八年押第一一五号の二六)、赤表紙売掛帳(前出)
買掛金(44、47)
一、被告人作成の上申書
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年一月九日付質問てん末書
一、押収してある封筒入書翰一袋(前出)
未払金(45)
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年一月一二日付質問てん末書
一、金子トミ子の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、押収してある土地売買契約書一通(前出)、黒表紙手帳(前出)
借入金、支払利息、社長勘定
一、被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、金子トミ子の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、商工組合中央金庫広島支店長江崎健作成の証明書(三通)
一、大蔵事務官遠藤登芽夫、同柴田元隆作成の各調査事績報告書
一、押収してある土地売買契約書一通(前出)、黒表紙手帳一冊(前出)、金銭消費貸借契約証書一通(同号の二五の三)、納品書等一綴(前出)、資産負債勘定一綴(前出)
社長勘定
一、小西敏江作成の上申書
一、広島市長山田節男作成の証明書一二通
一、広島県総務部税務係長作成の納付状況について(回答)と題する書面
一、可部税務署長作成の納付状況等について報告と題する書面
一、押収してある源泉徴収簿一冊(昭和四八年押第一一五号の二七)、資産負債勘定一綴(前出)、損益勘定一綴(同号の九)、納品書等一綴(前出)、赤表紙売掛帳(前出)
申告事実および公表金額
一、押収してある所得税確定申告書一綴(昭和四八年押第一一五号の一-44、45、46)、青色申告書類つづり一綴(同号の二-44、45、46)、法人税確定申告書一綴(同号の三-47)、総勘定元帳三冊(昭和四四年度-同号の五、昭和四五年度-同号の六、昭和四六年度-同号の七)、資産負債勘定一綴(前出-47)、損益勘定一綴(前出-47)
(法令の適用)
被告人小西利勝の判示第一の各所為はいずれも所得税法二三八条一項に、判示第二の所為は法人税法一五九条一項に各該当するところ、情状によりいずれも所定の懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の(一)の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪につき定めた罰金額を加算し、その刑期および金額の範囲内において同被告人を懲役一〇月および罰金一、〇〇〇万円に処し、被告会社については、その代表者である被告人小西利勝が被告会社の業務に関して判示第二の違反行為をしたものであるから法人税法一六四条により同法一五九条所定の金額の範囲内で被告会社を罰金三〇〇万円に処し、刑法一八条により被告人小西利勝が右罰金を完納することができないときは金二万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置し、同被告人に対し同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤野博雄 裁判官 宮城一 裁判官 竹崎博充)
別紙 修正貸借対照表その(一)
昭和44年12月31日現在
<省略>
<省略>
別紙 修正貸借対照表その(二)
昭和45年12月31日現在
<省略>
<省略>
別紙 修正貸借対照表その(三)
昭和46年7月20日現在
<省略>
<省略>
別紙 修正貸借対照表その(四)
昭和47年2月29日現在
<省略>
別紙
税額計算書(所得税)
<省略>